「いい景色……!」
「だろう? ここなら彼女も、寂しくないと思ってな」

 セシリーは手を拡げ、大きく息を吸いながら、しばし周囲の光景に見惚れた。

 なるほどそこでは秋口に差し掛かる今、紅や黄色の葉が敷き詰められ……青空や眼下の景色と相まって鮮やかな情景を(かも)し出し、生命の息吹を感じさせてくれる。そして一本の木の根本には、周りの景色に溶け込むようなささやかな石碑が、密やかに据えられていた。

「やあ、サラ……また来たよ。相変わらず、お友達たちも元気にしているようだ。おや……」

 石碑から樹上に飛び立った小鳥たちが、一行を不思議そうな目で見つめる中、オーギュストは、近くに置かれた花立てに一輪白い花が捧げられているのに気付く。枯れていないところをみると、そう古いものではなさそうだ。

 ふたりは一緒に首を傾げた。

「誰か来てくれる人がいるの……?」