「なんでもないですわ……。別に、私は反対してるわけじゃありませんの。無茶は若者の特権ですし、あの生き生きした姿が本来の御嬢様なのでしょうから、覚悟の下で何かをされるなら、もうエイラは止めません。さあ、こちらにおいでください」
「協力してくれるの!?」
「今回だけですよ。御館様には秘密ですからね?」

 セシリーの手を握ると口元に人差し指を当て、エイラは少し悲し気な笑みを見せた――。




 ――それから数十分後。

 快晴の下、時計塔広場で頭上の大時計の針が十二時四十五分を差すのを見て、ラケルとリュアンは残念そうに眉を寄せた。

「……来ませんね」