今も時折、周りからは小さな破砕音がしている。早めに移動しなければここも危ういかもしれない。

「はぁ、はぁ」

 浅い呼吸を響かせながら、地上への通路を目指してセシリーは進む。現在地がわからない以上、分岐路が出ないことをひたすら祈るセシリーに、奇妙な音が聞こえてきた。

 ……チャッ……チャッ――。

 硬いものが触れ合うような音は、わずかずつ大きくなり、しかもどんどん間隔が狭まってゆく。

(……もしかして、魔物とか? こ、こんな時に嘘でしょ!?)

 悪い予想が頭に浮かび、セシリーは背に冷や汗が伝うのを感じた。
 何者かがこちらに向かってきているのは定かだ。セシリーはそっとリュアンを横たえると、せめて壁にかかっていた松明の燃えさしを引き抜き、体の前で構える。