「……よくやった」
「ごめんなさい……リュアン様、私」

 向き直ったセシリーに、微笑みを浮かべていたリュアンは頭を撫でてくれる。

「頑張ったな、セシリー。立派だった……」

 それだけ言うと、彼の手は力なく離され、体がゆっくりと横倒しになる。心臓が止まりそうになったセシリーは、慌てて彼を抱き止めて寝かせ、胸がゆっくりと上下に動いているのを確かめると心から安堵した。きっと彼は、気力を振り絞って今まで意識を繋ぎ止めていたのだ。

(ありがとうございます……リュアン様)

 赤子のように力を抜いた表情のリュアンの頬を撫でると、セシリーは涙を拭いて振り返る。幸い鉄柵の一部がゆがんでできた隙間から、牢からは脱出できそうだ。道も半分が瓦礫や土砂で埋もれているが、なんとか通れないことはない。

 すぐに決断しリュアンを背負おうとするものの、体格差があり過ぎて厳しい。やむなく肩の下に手を差し込んで後ろ向きに引きずってゆく。