「ずっと、言いたかったんだ……。来てくれて、ありがとうって。いつも頑張ってくれてたのを、見てたよ……。朝早くから……笑顔で、皆の世話をして……。お前がいてくれると、皆、楽しそうで……。だから……こんな風に傷つけて、本当に」

 『――ごめんな』……そうささやかれたか細い声を聞き、セシリーはリュアンの本当の強さに、少しだけ触れられた気がした。きっと、どんなに自分が苦しくても、決してこの人は誰かに寄り添うことを止めはしない。こんなにも優しく、傷つきやすい繊細な心をしているのに……ぼろぼろになるまで体を痛めつけられているのに、今だって自分を一言も責めず、一生懸命に手を差し伸べてくれている。彼だって、最初から強かったはずじゃないのに。

 キースも言っていた。出会った頃は、ひ弱なただの一生徒に過ぎなかったと。それでも、もう失うまいと……。大切な人との誓いを胸に、今度は自分だけではなく、沢山の人の想いを守り抜こうと、彼は今も足搔いて――。

 男たちの哄笑を前に、セシリーは決然と顔を上げた。

「――何がおかしいの」

 はっきりとした声音に、笑いがぴたりと止まる。
 しかしすぐに軽薄そうな男が茶を濁すように、男たちを囃し立てる。