「ごめんなさい、ごめんなさいっ……!」
「かわいそーだなぁ。まったく、女の子泣かしちゃあ駄目じゃなねぇの、騎士団長さんよ……ブハハハハ!」

 げらげらとせせら笑う男たちの顔を見返すこともできず、セシリーはリュアンの胸に縋り、泣いて謝ることしかできない。

「……違うよ」

 しかし、セシリーの背中にそっと当てられた大きくて繊細な手は、こちらを安心させるように、ゆっくりと優しくさすってくれる。

「……お前が謝ることなんて、なにもない。駄目だったのは、俺なんだ。あの時お前が、頑張って伸ばしてくれた手を、ひどいやり方で拒んでしまった……」
「そんなの、私がただ勝手に期待して、落ち込んで……」
「……違う。俺は、お前のことが嫌いでああしたんじゃ、ない……。勝手にお前に亡くした人を重ねて……過去と向き合うのが、辛くて……。弱い自分を守りたくて、目を背けた、だけ……で――」

 リュアンはひどく咳き込んだが……意識が朦朧としながらも震える手を伸ばし、セシリーの頬に伝う雫を、冷たくなった指で拭ってくれた。