「なんっ……!」

 リュアンの手首には見慣れない腕輪が嵌められている。おそらくこれが彼の魔法を封じているのだろう。侮蔑の言葉がセシリーの沈んでいた心に怒りの火を灯したが、放とうとした言葉はぐっと袖を引いたリュアンに止められた。

「……いい。今は……大人しくしててくれ。もうすぐ、皆が助けに来るから」
(全部、私のせいじゃない……!)
 
 口の端から血を流し、激しくむせたリュアンの姿が、セシリーに悲痛な後悔を抱かせた。

「ごめんなさい……! 私、役立たずで……私のせいであなたまでこんな酷い目に遭わせて……。私なんかが、騎士団に行かなければよかったのに……。こんなことになるんだったら、家の中で蹲ってたら、よかった」

 弱々しい反応しか返さない彼の背中をさすりながら、セシリーは泣き言ばかりでわななく口を覆う。

 浅はかにも……変わろうという決意だけで、なにかできるようになったつもりでいた無力な自分。騎士団の皆が輪の中に入れてくれて、すっかり彼らの一員と成って、役に立てた気がして嬉しかった。しかし、こんな悪意を前にして、セシリーの存在はただ彼らの弱みを増やしただけで――。