「……あんたとは、踊れない」
「え……っ」
 
 その直接的な言葉に、セシリーの手が胸の前に引っ込められる。
 そのまま無言で、リュアンはなにかをこらえるように立ち尽くす。

「……や、やだぁ、天下の魔法騎士団長様ともあろうものが恥ずかしがるなんて、らしくないですよ? まさかぁ、あんなに動けるのに、ダンスの心得だけ無かったりして……」

 セシリーはくだけた口調で軽く挑発してみたが、それでもリュアンは冷めた瞳を俯けているだけで、憎まれ口のひとつすら帰してくれない。嫌な沈黙が続いてセシリーは迷ったが、キースは強い視線でこちらを見据えており、リュアンがこの先も団長を務めてゆくならば、これは避けては通れないことなのだと感じた。

「ほら、ゆっくりやってみましょ。怖がることないですよ、こんなのただの練習で――」

 仕方なく勇気を出し、セシリーは自分から彼の元に歩み寄って再度手を伸ばす。しかし……。