「お師匠様、ありがとうございました! またリルルと一緒に時々伺います!」
「学費は必ず返しに来るのだぞ!」

 そんな一言を背に受け、入団式の当日ラケルは長い間世話になった師匠の屋敷を後にし、魔法騎士団の本部へと赴いた。

 入団式は魔法騎士本部の一番大きな部屋である作戦室兼会議場で執り行われた。
 同輩と共に希望を胸に秘め、立っていたラケルはそこで仰天した。なんと、団長として激励の挨拶で壇上に立ったのは、ラケルが魔法騎士を志すきっかけとなったあの黒髪の青年であったのだ。年齢的にまだ入りたてだったはずのあの若い騎士が、数年で魔法騎士団の団長へと登り詰めているなんて……。

「俺を見れば分かる通り、この団では年長者に敬意は抱けど、役職を差別することは無い。実力のある者は若かろうがどんどん上に上がってもらう……。だが、それは決して競争が目的ではなく、我々の本懐……より多くの魔物に苦しむ人たちを救うためだということを肝に銘じてくれ! 弛まぬ鍛錬を続けながらも周囲の仲間を尊重できる、そんな人材を選んだつもりだ……。君たちのこれからの活躍と、いつか団の担い手として成長してくれることを願い、敬礼!!」