騎士学校での三年間は、厳しくかつ充実したものだった。平民であり、騎士としての訓練を積んだこともなかった彼に周囲からの風当たりは強く、嘲りを受けることも多かったが、それを除けば体を動かすことが好きなラケルにここでの生活は合っていたし、ジョンから指導を受けた魔法も大きく彼を助けた。

 いつしか、生来の明るい性格もあって多くの仲間を作った彼は、卒業試験を優秀な成績で突破した後、念願であった魔法騎士団への所属が決定した。満面の笑顔でそれを報告しに来た弟子に、ジョンは頭を抱えながら苦笑すると、愚痴を漏らす。

「こっちはお前を一人前の魔法使いに育てようとあれだけ苦心してたというのに……。まあよいわ、本日をもってお前は我が弟子から卒業とする。これを持って行くがよい」

 彼から渡されたのは、一本のごく短い杖だ。伸縮式で手のひらサイズに収まるそれは、口頭で詠唱するのと違って魔法陣を描き魔法を起動するのが苦手なラケルに、修練を欠かさぬようにという戒めの意味が垣間見えた。