(こんなお店あったんだ……。ひっそりしてて気づかなかった)
「お疲れ様でした。お礼と言っては些細(ささい)かもしれませんが、なんでも頼んで構いませんよ。ここはお茶も茶菓子も一級品ですので」
「……あらまあ、キースの坊ちゃま、お久しぶりでございます。そちらのお嬢様は?」

 キースに気付いてすぐ接客してくれたのは、白髪交じりの髪を頭の上でまとめた品のよさそうな老婦人である。どうやら彼とは知己のようで、穏やかそうな表情が彼とよく似ているように思えた。

「メイアナ、そろそろ坊ちゃま呼ばわりは止めてもらわないと。この方は、私のいい人で――」
「違います。あの私、魔法騎士団で雑用を任されているセシリー・クライスベルと申します」

 キースの冗談をばっさり否定したセシリーの名を聞くと、老婦人は思うところがあるかのように首を傾げた。

「あらいけない、もう坊ちゃまももういいお年でしたわね。でも、クライスベル……? 間違っていたらすみませんが、もしかしてクライスベル商会のところのお嬢様ではありませんか?」