「ほら、こういうこともありますから捕まっていて下さい。なにかあれば、私の監督不行き届きという事で、ロージーからきつい雷が落ちますからね」
「……ごめんなさい」

 セシリーは仕方なく、彼の腕を遠慮しつつもつかんで身を寄せる。
 長身で見た目細身に見える彼だが、いざ触れてみるとしっかりと鍛え上げられているのがわかって、こんな格好いい人の隣にいるのが自分だと強く意識させられ、なんだかとても恥ずかしくなってしまう。

 そんな彼女を優しく見つめ、キースは穏やかな口調で話す。

「とりあえず、続きの話は大体の買い物を終えてからにしましょうか」
「何が必要になるんでしょう? 物によってはうちの商会で割引が効きますし、一応、王都にある大体のお店の情報は頭に入ってますのでご案内できると思いますよ」

 セシリーとて一応、クライスベル商会総支配人オーギュストの娘であるのだ。父から聞きかじった話もなども含め、商売に関してのことは、ある意味唯一の得意分野だと言えなくもない。それを伝えると、キースは白い歯を見せて笑った。