「こらこらティシエル、そんなわけないでしょ。彼はただお手伝いに来てくれただけなのに」
「信じられないよ! 男の人の心にはケダモノが住んでるってお爺ちゃん言ったもん! セシリーみたいないい子、あっという間に騙されちゃうんだから!」
「はぁ……ティチ。ちょっとこっちに来なさい」

 セシリーは過剰反応を見せるティシエルを連れて一旦その場を離れ、今後リュアンに会っても絶対に失礼な態度は取らないようなんとか言い含める。彼女をルバートのところへ戻らせてやれやれといった感じで振り返ると……後ろに立つ騎士団長様は冷たい視線でこちらを射抜いてきた。

「ずいぶんいい友達を持ってるじゃないか」
「すみませんでした。悪気はないんですあの子、私のことを友人として大事にしてくれてて」
「……ふん。まあいい、面だけ見て騒がれるよりはいくらかましだし、お前に警戒心が足りてないのもよく分かる話だからな。買い物が終わったんなら戻るぞ」

 寛大だが、一言多いリュアンにひたすら謝罪しながら販売所を出たセシリーは、お詫びの気持ちも兼ねて彼を喫茶店に誘う。