「ううん、やめときます。あんまりお金も持ってきてないし」
「あれま。そっちの格好いいお兄さんは甲斐性みせてくれないのかね」
「そういうのじゃないんですよ、彼とは。ね、リュアン様」
「え? ああ、そうだな……」

 あまり長時間いても冷やかしになってしまう。気のない返事をするリュアンの袖をセシリーはそろっと引き……こちらはこちらで何かひらめいたのか熱心にメモを取っているティシエルが戻るのを待つ間、少しだけ言葉を交わす。

「いいものありました?」
「やはり、職人の細工は素晴らしいな、滑らかで気品があって。使っている金の質もよさそうだったし、今はもったいなくて無理だが、いつか俺もああいうのを――」

 決意に燃えるリュアンはそこまで言った後、にっこりと笑うセシリーと目が合って、帽子で顔を隠す。

「……なんでもない」