人間を好まないらしいゼファーは、長きにわたる封印のせいで食と睡眠を必要としていなかったが、エステルの頑張りのおかげで少なくとも眠れるようになった。

 食事に関してはエステルが作ったものしか口にせず、偏食っぷりも相変わらずである。

「ご飯の話をしたらお腹空いちゃった。早く作らなきゃ」

 エステルを先頭に、その後ろを幼馴染たちが続く。

 その様子は冒険に出る勇者の一行(パーティー)のようだった。



 そんなある日のこと、村に初めての客がやってきた。

 メイナ村を領内に置く地方貴族、キュラス男爵の使者だった。