いつしかリンバーグ山が赤く色づき、メイナ村にも秋がやってきた。

「多くねーか?」

 大量の食糧で圧迫された氷室から出てきたディルクが言う。

「備えあれば憂いなしって言うでしょ? だからこれでいいんだよー」

 エステルが冬に備えて張り切った結果、来年の春までなにもしなくても問題ないのではないかというほど食糧事情が安定していた。

「これなら今年の冬は、干し肉をかじって乗り切ることもなさそうだよな」

 ディルクに続いて氷室から出てきたフェンデルの手には、村の窯場で焼いた陶器の壺がある。

 その中になにが入っているのかを知っていたエステルは、腰に手をあてて怒った顔をしてみせた。