秋が近づくと夜の気温もぐっと下がる。

 エステルは暖を求めてゼファーの胸に顔を押しつけた。

「お兄ちゃんが帰ってきたらフライドチキンを食べさせてあげるんだ」

 しみじみと言い、エステルは目を閉じる。

「……秋も冬もこんなふうに過ごして、無事に春を迎えられたらいいな」

「あまり気にする必要はなさそうだがな」

「そう思う?」

 エステルが顔を上げると、思いがけず近くにゼファーの端正な顔があった。

 暗闇に浮かぶ深紅の瞳がエステルを捉えている。

 そこには相変わらずこれといった感情が見えない。