手についたパンくずを払ったあと、エステルは水筒の蓋をしっかり締めてカバンにしまった。

 その間も畑で野菜の収穫をしていたレスターのもとへ向かい、声をかける。

「次はお兄ちゃんが休憩する番だよ」

「もう? もっと休んでていいよ。あとはここだけだし、すぐ終わるから」

「だめー」

 石窯パンの流行でサンドイッチが作られるようになると、レスターが管理する畑の野菜の需要も増した。

 ここで作られているのは主にレタスに似た葉物野菜とトマトだ。

(畑もいつかはここだけじゃ足りなくなる……のかなぁ)

 エステルが疑問に思った理由は、ここが彼女の思う普通の畑とはどうも違うように思えるからだ。