村人たちは無邪気にパンを頬張るエステルを見て微笑ましそうに手を振る。

 まさか七歳の子供が産業について考えているとは誰も思っていないだろう。

 エステルはフェンデルの手を借りて作った木の水筒から、パンの最後のひとかけらをレスター特製の薬草茶で流し込んだ。

 ちなみに、細長い木筒に蓋となるひと回り大きい器をはめ込んだだけのこの水筒も、わざわざ自宅に戻らずとも水が飲める便利なものとして村で流行している。

(冒険者や商人をたくさん受け入れられるようにするなら、もっと視野を広げていかなきゃだめだな。〝今〟じゃなくて〝明日〟を考えるようにしないと)