現在の季節は夏だ。

 エステルがかつてプレイしたシミュレーションゲームでは、どれもいかに冬を乗り越えるかが重要なポイントだった。

 ゆえに彼女は暑い盛りにもかかわらず、既に冬に向けての準備を始めているのである。

「ゼファー、手伝って」

「断る」

 一応声をかけたエステルだったが、やはり返事は芳しくない。

(こんなことなら村のみんなに『異種族の予言者』じゃなくて『新しい働き手』って紹介したほうがよかったかな。それならもう少し手伝いを強制できそうだったのに)

 事情を知る幼馴染以外の村人は、ゼファーの定住に文句を言わなかった。