まあ、こうなるだろうなという安易な未来予想を覆す、奇跡の存在。

 少し話してみれば、おかしいくらいに純粋だ。

 求婚者が現れないのだと言う。俺は何か誤解があるんだろうと思った。

 それによく理解出来ないくらい程に、自信がない。

 不器用なのかと思えば、すぐに執事に優秀だと認められてしまうくらいの有能振りを見せる。

 シリルと成り行きで結婚することになったフィオナは、彼女の持つ何もかもがちぐはぐな印象だった。

 何かを気になったらそれを解き明かすために、研究したくなる。

 これは魔法使いというか、研究者にはそういう悪癖がある。

 大前提として魔法使いは、研究者でないと務まらない。

 無数の魔法構造を覚え、それを自分なりに落とし込んで現実へと発現させる。俺はそういう職業病を患っていた。

 だからと言って、女の子をそういった興味の対象にするのは、俺には産まれて初めてのことだった。

 人妻だから、不用意に触ることも出来ないし、口説くことも出来ない。

 しかも、自分が結婚のきっかけを作ったと言っても過言ではない、親しい友人の妻。

 決して手が出せぬ、不可侵の存在。

 つまり、平たく言ってしまうと俺はシリルのことが好きなフィオナが、気に入っているのだ。