だが、救世の旅が始まった時には、ベアトリスの年齢は成人近かった。

 泣いて癇癪を起こされても、可愛くない。

 心の距離はどんどん開いていった。

 一緒に居た一年半の間には、俺とベアトリスとの間にはいつしか埋めがたいほどの奈落が出来ていた。

 どんなに顔が綺麗だろうが美しいと褒めそやす容姿を持っていようが、どうでも良い。嫌なもんは嫌なんだ。

 素晴らしい容姿を以てしても、ベアトリスの持つ様々な欠点はなかったことにはならない。

 要するに自分を気持ち良くさせるためだけの要求を繰り返しているだけで、彼女とそれ以外は姫と召使いの関係だ。

 もし万が一があって召使いになるのだとしても、仕える主人が悪すぎる。

 俺が逃げることを許されている立場であったら、三日と持たずに逃げていたはずだ。

 俺たちも、最初は言い聞かせてなんとかしようと思った。年齢的には上だったし、理屈を話せばわかると思うからだ。

 何をしても、全く響かず無駄なこととは知らずに。