歴代で一番と言われようがルーンの魔力だって、無尽蔵な訳でもない。先を急ぐなら、あいつに全体攻撃魔法で一掃して貰った方が、俺たちは怪我も少なく先に進める。

 まあ……それがわかってたら、こんなことを言わないか。

 蝶よ花よと甘やかされ、これまではふわふわのベッドで寝ていたんだろう……けど、俺たちが魔王を倒さないと、この国どころか世界が溢れたモンスターに支配されて滅ぶんだけどな。

 それをわかってたら、そんなことを言わないよな。

 俺たち三人はどうにかして、お姫様気取りの聖女を怒鳴り付けたい衝動を必死に耐えていた。だって、ここでベアトリスの機嫌を損ねて、何日か旅が長引くだろ? それはそれだけ良くわからない苦しみが、長引くことを意味するんだ。耐えるしかなかった。

 ベアトリスのわがままっぷりは、もう筆舌に尽くしがたいほどに凄かった。

 俺だってか弱い女の子には、出来るだけ優しくしたいとは思う。俺たちは違う性を持ち、持っている力だって全然違う。体の仕組みだって違うし、気分に波があるのも仕方ないことだとも理解はしていた。