「ライリーの方が上手いよ。俺にはもうフィオナが居るから、よろしく頼む」

 軽い口調で言い合ったと思えば、二人とも真剣な表情で睨み合い、緊迫した空気が流れた。

「……良し。俺はフィオナ夫人への求婚権のために、シリルに決闘を申し込む」

「ライリー。殺されたいみたいだから、俺が特別に相手してあげるよ。覚悟は良いんだな?」

 求婚権というと実はこの国独自の古い風習で、夫の許可があれば、妻に求婚することが可能になる。

 昔は親に売られた妻とは名ばかりの奴隷のように扱われている女性が多く居て、それを憂(うれ)いた王が苦肉の策で可哀想な女性が愛する男性と結ばれるように作った法律だ。

 けど、まさか……私の夫にそんな要求をする人が、現れるなんて……。

 戦闘で言えば世界でも類を見ないほどに強い二人の放つ覇気に、私自身が何も言えないままに話は進んでいく。

 昨日、初めて見た大きな赤い虎もライリーさんの後ろに現れて、彼らの応酬(おうしゅう)が本気であると知れた。

「おいおい。シリル。安穏とした生活に慣れ、動かな過ぎて太ったんじゃない?」