「俺がベアトリスから、すでに逃げ切れたのは確かだ……ライリー。すまない。今の俺は共に死線を超えた友人より、愛する妻が大事なんだ。結婚すれば、君にも理解出来る」

 シリルは凛とした口調で言えば、ライリーさんはそれを鼻で笑った。

「お前。そう言うキリッとした真面目な顔したら、何言っても許されると思うなよ。フィオナ……シリルと、離婚してくれ。俺と結婚しよう」

 正直に言うと、夫シリルではない男性に真剣に見つめられて求婚された私は、胸の中にある心臓が跳ねたようにドキッとはした。

 ……けど、これは別に! 浮気とかそういう訳では、絶対にないから!

 悪っぽい美形で見るからにモテそうなライリーさんにこんな風に求婚されたら、世界のほとんどの女性はドキッとすると思う!

「は? ライリー。自分が口にしている意味が、わかってるのか」

 二度目の求婚を聞いて脅すような口調になったシリルの後ろにゆらゆらとした白い竜が現れて、彼が戦闘態勢に入ったことが知れた。

「……ふっざけんな。わがままベアトリスなんか、一生面倒見れるか。シリルの方が、あいつの操縦上手いだろ」