「フィオナ。俺と結婚しよう」

「……え?」

 いきなり何を言い出すのかとぽかんとした私をよそに、ライリーさんは言葉を続けた。

「ルーンの話を、全部聞いた。シリルがベアトリスから逃げられたのは、フィオナのおかげだと。シリルと出会って一日で結婚を決められるなら、俺でも良いはずだ」

「いや。君は誤解してる。ライリー。別にそれだけで、俺たちは結婚してないよ。フィオナを一目見て可愛いって思ったし、エンゾだって、俺みたいな男には彼女はピッタリだって言ってくれたし」

 シリルはライリーさんが何か誤解しているらしいと、さとすように言った。

「ヴィオレ伯爵と正面から敵対出来るノワール伯爵の年頃の娘は、フィオナひとりだけだよ」

「おい。ルーン……」

 眉を寄せたシリルがルーンさんにとがめるように言うと、彼は肩をすくめて淡々と言った。

「俺。どっちとも仲良いし、どっちの味方でもないし。その程度のフィオナの情報なんて、調べたらすぐバレるだろ」