「……ベアトリスはね。冒険の間ずっと、恋人ならライリー結婚するならシリルって、言ってたんだよな……冒険の間は結婚出来ないし、恋愛期間って思ってたのか、一番に迷惑被っていたのが、さっきのライリー。決定的な言葉を使わずに逃げ回った。結婚向きのシリルと結婚するのが無理だったら、多分次はライリーだろうな。はー、まじ良かった……ベアトリスに、好まれなくて」

 しみじみとそう言ったルーンさんは、別に皮肉のつもりでもなんでもなく、言葉通りに心から思っているようだ。

「えっ……嘘。男性二人ともに、チヤホヤされたかったんですか?」

 ベアトリスさん。すっ……すごい。私には、そんなの希望するのとても無理。

「うん。周り中魔物だらけの中で、ベアトリスに気分を損ねられたら、俺たち回復もろくに出来ずに、あんな感じの魔物と戦うことになるからさ……魔王討伐の旅は命懸けだったよ。文字通りに」

 驚きすぎて言葉も出なくなった私に、シリルはどこを見ているのかわからないくらいに遠い目をしながらそう言った。

 しんみりした雰囲気に何か言わなきゃと思った私は、ずっと肩を抱いていた彼を見上げて言った。