「ああ。良かった……ライリーが、そこまで怒ってなくて」

 ほっと安心して胸を撫で下ろした様子のシリルに、ルーンさんが微妙な表情を浮かべ頷いた。

「今回の件で自分へ攻撃した優しいはずのシリルを諦めたベアトリスが、ライリーと結婚するとか言い出さないと良いけどな。俺もまだ魔塔との契約期間残っているし、王が今度はライリーを探して来いって言えば聞かざるを得ないし」

 魔塔と契約している魔法使いには厳格な決まりが定められているらしく、ルーンさんは契約魔法で縛られているので、出資者である王からの要請があればどんなに嫌でも聞かないといけないらしい。

「あの……? ルーンさん。ベアトリス様って、シリルのことが好きだったんじゃなかったんですか?」

 私は二人がさっき交わしていた謎の会話が、ライリーさんを呼び出すことを示していたのは理解出来た。

 けれど、ベアトリス様がシリルと結婚することを諦めたら、なぜあのライリーさんが次に狙われることになるの?

 確かにライリーさんも、シリルとは全く方向性が違う女性が好むような美形ではあったけど……。