ルーンさんが上を指差して、私には大きな魔物を指し示せば眉を寄せた彼はこともなげに言った。

「あの程度……すぐに倒せば良いじゃないか。勇者と魔法使いが二人揃ってぼーっと突っ立って何しているんだ?」

「色々あって、シリルはベアトリスの代わりに国を守る広範囲の守護結界張っているし、俺は魔力を限界まで吸われてる。今頼りになるのは、お前だけだ。剣聖ライリー」

「なんだよ……その何があったか、くそ気になるよくわからない状況は。仕方ない。少し待ってろ。後で事細かに、事情を聞かせて貰うからな」

 そう言った彼は特別な予備動作もなく、空へと舞い上がった。ふわりと浮いて、上空へと高く上がって行く。

 彼を追うように何の足場もないはずの空を走っていく大きな赤い虎は、この前に見たシリルの白い竜のように実体はなく燃え盛る火で形作られているようだ。

 すっ……すごい。ルーンさんも空を飛んでいたけど、彼らはこんな風にして魔物と戦ってたんだ。

 やがてキーンと高い音が辺りに響き渡れば、魔物と相対したライリーさんが背中にあった大剣を抜いているのがかろうじて見えた。