そう言えば……シリルっていつからあの場所に居たんだろう。ううん。そうだ。なぜここに私が居ると、知ったんだろう。

「どうかねえ。あの娘にして、あの親ありだ。可愛い娘の悪事を有耶無耶にして終了なんて、いくらでもあっただろ。政治的に穏健派だったはずのフィオナの父ノワール伯爵が、横暴な要求ばかりのヴィオレ伯爵に表立って対抗するには訳がある……あの王さえ、もっとしっかりしてくれたら」

 大きくため息をついたルーンさんに、シリルは苦笑して言った。

「……まだ、若いからね。俺たちより、年下だ。経験も少ないのに彼に完璧を求めるのも、かわいそうだ」

「立場的にそんな甘いこと言っていて良いのか、わからないがな……おいおい。なぜか知らないけど、鍵が外側から掛かってるな。お前、どうやって入って来たの?」

 ようやく長い長い階段を登り切り、ようやく外に出られると思った時に、扉を開けようとしていたルーンさんがまた舌打ちをしたのが聞こえた。

「俺は、普通に入れたよ。その後で誰か閉めたんじゃない?」