シリルは期間を聞いて笑顔のままで固まったので、私は慌ててしまった。彼は庶民出身なのだし、もしかしたらもっと早くに出来ると思っていたのかもしれない。

「シリル。ごっ……ごめんなさいっ……私、もっとすぐに出来るドレスでも、大丈夫だから。今から基本になるデザインを、違うものに変えるわ」

「いやっ! 何を言ってるんだ。俺はフィオナを世界で一番幸せな妻にするんだ。そのためになら、どんなに時間や費用が掛かっても構わない。うん。マダム。大丈夫だ。それで進めてくれないか」

 はっとしたシリルはキリッと真面目な顔になってそう言ってくれたので、私はほっと息をついた。本当に私の夫は、優しい……好き。

「……あの、ロッソ公爵夫妻は既に結婚証明書を提出されて、同居されていると聞いておりますが」

 最高責任者のマダムは厳しい顔をして、重々しくそう言った。

 体面を重んじる貴族ではそういった流れは珍しいので、貴族と付き合いのある彼女のこと、私たちの噂を早々に聞いていたのかもしれない。

「ああ。そうだよ?」

 明るく社交的なシリルは軽く答えたので、彼女はより難しい顔になった。