「そう言うわけにはいかない。失礼して良いかな? 緊急事態だから」


「っきゃぁ、」

 横抱きにされエミリオ様の顔が近い……凛々しくて、身長が高いから抱えられていると私の目線も高くなる。これならあたりをよく見渡せるわ……


 一歩一歩歩く歩幅が大きいものだからあっという間に王宮の廊下へ着いた。


「ありましたよ。この靴で間違いないですか?」

 こくこくと頷く。するとエミリオ様は廊下のベンチ迄運んでくれて、割れ物でも扱うようにそぉーっと私をベンチに座らせてくれた。


「ありがとうございました」


「いや、大したことでありません。何もなくて良かった。すまないが足を見せてくれ」

 ……足を見せる? ここで? 跪きストッキング 越しだが触れられた。なにかいろんな熱が顔に集中して真っ赤に染まった。それは自分でも分かるくらい真っ赤っかだ。


「怪我はないようだ。汚れているから少し拭いておいた、よ……」

 と言って靴を履かせてくれた。真っ赤に染まる私の顔を見てエミリオは目を逸らした。


「……すまない、いくら怪我の様子を見るにしても令嬢の足に勝手に触れるなど……」

「……いえ、その、わ、忘れてください」


 嫌とかじゃなくて……申し訳ないと思った。躊躇なく助けてくれたり、怪我を心配してくれたり。二人でモジモジ? していたら


「あのー戻らなくて良いんですかね? お兄さんが心配していませんかね?」


「「あっ!」」

 エミリオとルーナ二人の声がシンクロした。


「行かなきゃ」

 立ちあがろうとしたけど、足が震えてよろめいてしまった。エミリオがそっと助けてくれた。

 さっきの前侯爵の弟の息子の事が頭によぎった。(決して名前は呼ばない! 襲われそうになったんだもの)

「良かったら腕を貸します。杖代わりだと思ってください」


「ハイ……」