「クズだとは思っていたケド、ここまでクズだとは思わなかったわ」
アグネスは札を数えながら一人ごちる。
あんなに人の事をコケにしておいて、『仕方がない。アグネスを領地に連れて行ってやる』だなんて言って友人に会いに出て行った。
その間に出て行こうと考えていたら、ジョゼフの親が出てきて手切金を渡してきた。それを受け取りとんずら決定!
ジョゼフのお金を使って買っていた宝飾品は没収されなくて良かった……この家から解放される。使用人みんなを敵に回して疲れていたのよね。
はぁっ。ぐしゃっと髪をかき上げる。
ルーナさんだってあんなクズに好かれて可哀想に……若いのに中々やるけどもう会うことはない。あの子のことは嫌いじゃない。なんでって? 女同士にしか分からないことってなんとなくあるじゃない?
それにしても、ぷっくっくっ……笑いが止まらないわ……。
毎日毎日商人を呼んでおいてよかった! ジョゼフの親から貰った手切金と宝飾類。これでしばらく遊んでいても暮らせるじゃない?
でも世の中はそんなに甘くない事も知っている。
ルーナさんに会う前はジョゼフの言う通り別れさせて侯爵夫人か第二夫人になるつもりだったけど、あの子を見てやめた。私とは全然真逆の子。
会ったこともないあの子が憎いわけではなく、私の人生を弄んだジョゼフに一泡吹かせたかった。
ルーナさんは離婚する、それなら私もジョゼフから去る。少しでも私に有利になるようにしなきゃ損じゃない?
フラれたわけではなく私がふってやったの。そこは大事だから間違えないでいてほしいわ。強がりじゃないから。
私を殴ってきた時に手切金が増えると思ってほくそ笑んでしまったわ……。
もちろんやり返すことは忘れずにね。まだ足りないけど、暴力は良くないわね。