「申し訳なかった。まさか愛人を家に連れ込んできているとは……侯爵家始まって以来の不祥事です。愛人を追い出すからと使用人に口止めまでしていたようです」


 前侯爵夫妻は頭を深く深く下げた。



「このまま息子を侯爵家の当主に据え置くことは出来ません。私の弟に息子がいるのでその子を当主にし、ジョゼフは領地経営を手伝わせる事にして領地に引っ込ませます」


 ……当主交代になったようだ。


「あの、私が求めるものは離縁だけでこんなに慰謝料を貰うわけには……それに侯爵様はお仕事はきちんとされていましたし、そこだけは評価してあげてください」

 当主を降りることまでは望んでいないと言う意味を込めた。関わりたくはないけど。王太子妃に誘われたお茶会では仕事は熱心で評価されていると聞いた。それに侯爵家の仕事もちゃんとこなしていた。そこだけは認めても良い所。本人には言わない。


「なぜこんなに心優しいルーナ嬢を傷付けることが出来たのか……恋人がいることは知っていました。別れるように散々言いました。恋人の元を訪ね手切金の準備もしたのですが、別れないとの一点張りで……結婚すれば愚かな行為はやめるとたかを括っていた私も悪い。慰謝料は侯爵家の心からの謝罪として受け取って欲しい」


 結局、両親に返そうとしていた一億リルが二倍になって返ってきた……


 そしてあっけなく離縁となった。


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「どうしたルーナ、浮かない顔をしているようだが」

「あ、お兄様……」

 庭でぼぉーっとしていたら声をかけられた。


「結局、自分で解決できなかったなぁ。って思って。離縁は私の我儘だから用意してもらった一億リルはちゃんと稼いで両親に返そうと思っていたの」

「倍になって返ってきたぞ。それで良いだろう?」