「それなら④である侯爵家当主に相応しい行動と言う面で破られている。③の愛人を虐めるなと言う点で、逆にルーナを虐めているように思えてならんのです。それに貴方自身で愛人に手をあげている」

「この契約書は都合のいいように置き換えられますね……契約は破棄した方がよさそうだ」

 ジョゼフは書類を破ろうとするがどうしても破れない。単なる紙だぞ! と焦るジョゼフにすかさずアルベーヌが口を出す。


「侯爵殿知らないの? こんな大事な書類をただの紙に書くわけねぇだろう。破れないように加工されてんの! さすがルーナだ、そこは抜かりがない」

 そう言ってアルベーヌは笑っている。


 焦るあまりに書類を落とし、ひらひらと落ちる紙、ヤバい!

「もう一枚、手紙?」


【私には愛する女性アグネスがいる。昔から情を交わしている間柄でアグネスと別れるつもりはない。
 ルーナとは家同士のつながりで結婚することにするが、私から愛される事を望むな。私の愛情はアグネスにだけ向けることになる。

 だがルーナと言う存在がいる限り、アグネスとは正式に結婚する事ができない。
 結婚後一年妊娠の気配がないと第二夫人を迎える事ができる。貴族にとって後継は必要不可欠だからだ。

 私はルーナと夫婦になるが深い関係になる事は望んでいない。一年後に離縁するか第二夫人を迎えるかはルーナの判断に委ねる。

 ルーナと結婚後は、アグネスも侯爵家に住まわせることになる。結婚後他の女性の元に通っている事がバレると外聞が悪いからだ。この件についてはルーナ自身が決めルーナがサインをするように】



……ヤバい。こんなものまで見られてしまった。ルーナに宛てた手紙の写しじゃないか!




「アナタ? 離縁の準備を進めましょう」
「そうだな。アルベーヌ、弁護士を呼んでくれ。早々に離縁の準備だ」