「侯爵様は長い婚約期間中に一度でも娘の事を知ろうと思って下さいましたか? 婚約期間中に何度娘に会いに来てくれましたか? 忙しいと言って誕生日にカードを送るだけでしたね。たしかに侯爵を引き継ぐと言うことは大変なことだったと想像致しますが、ルーナと向き合って下さったことがありましたか?」


「夫婦となったのですからもちろん向き合っていきたいとルーナにも言っていました。でもルーナはすぐに契約を持ち出してきて」





「……ほぅ、契約とは何のことかな?」


 空気がピリッとした。

 え? ルーナが言っていて知っていると思っていた……これはマズイ。

「いや、これには訳が……」

 圧が強く言わざるを得なくなった。嘘をついてまたルーナと復縁したいなんて信用できないと言われたからなんだけど……。




①私の(()()()())プライバシー・プライベートに侵害する事は許さない
②白い結婚とする
③アグネスを虐めてはならない
④侯爵家の夫人として務めよ(()()()()()()()()()()()()()()()
⑤私の(()()()())金の使い道に異論は唱えない
⑥王家主催のパーティー以外出席はしない


「なるほど……これをルーナに?」

「ルーナが直した部分もありますが契約をしています。撤回を求めても首を縦に振らなくて、」


「ふむふむ。なるほど離縁は簡単だな」

「なっ! でも一年は有効です」

「これを破った場合は離縁できるようだ。契約①は既に破られている。現にルーナのプライベートに口出しをしているじゃないか?」

「それは契約④で侯爵夫人として務めてはいない事にあたります」