「そんなもん分かるわけねぇだろ気持ち悪りぃ。どうせまだオンナとも別れてないんだろう? それで必死にルーナの事を妻と連呼して縛り付ける気か? オンナとも切れていないのに、ルーナも欲しいだなんてどんだけ強欲なんだよ。単なるエロジジィじゃねぇか。チャンスって言葉の意味を調べてから発するんだな」


「これ、アルベーヌ。口が汚いですよ」

 夫人、怒るところはそこですか……悔しいが何も言えない。


「侯爵殿では、話がつかないと思い申し訳ないが親同士で話をする事にします。すでに侯爵家の領地にいるご両親には手紙が届いているでしょう。侯爵殿が離縁に応じないと言うのならこちらは裁判で争っても良いと思っています。それに証人は多そうですよ? 色々調べさせてもらいましたが侯爵殿の愛人は使用人から随分と疎まれているようですね」

 報告書を机の上に置く。


「そ、それは……別れを切り出して、断られてしまって」

 焦るジョゼフに嫌悪しかない、伯爵家の三人。


「だから女性に暴力を振るったと? それは言い訳にはなりませんね。その暴力がいつ娘に向けられるか分かったものではありません。まずは愛人ときちんと別れてから話をするのが筋でしょうに」


「私が妻に暴力を? あり得ません! あの美しい顔に……身体に傷をつけるなど! あの女が私を煩わせるからです」


 ここに来てまだルーナの外見にこだわる男。


「愛人に手を上げた貴方が言っても誰も信用しないでしょうね。こんな事になるのなら婚約を断れば良かった……親として情けないです。前侯爵と夫人に頼まれて断れなかったから歳の離れた貴方と婚約をさせたが、まさかこんな結果になるとは。娘に申し訳ない」


 深いため息を吐き、今まで黙っていた夫人が口を出した。