でも例の手紙で私の心は冷えていった……愛されたいと思わない事ですって……

 悲しくて泣いた。

 辛い現実に泣いた。

 情けなくて泣いた。

 夫婦であっても夫婦にはなれない関係。

 愛情を求めない冷えた結婚生活。



 私はジョゼフを愛する事は出来ないと思った。



 こんな恥ずかしい事、誰にも相談出来ない。悲しくて悲しくて一人静かに泣く日々……侍女にもメイドにも知られたくない。私は愛されない存在のお飾りの妻になるのだ。それを事前に知らされて今日ジョゼフと結婚する。


 そして私は一年後に離縁を申し出る事になる。離縁後は両親にも兄にも迷惑をかけずに一人で暮らしていけるようにしなくてはならない。


 ベルモンド伯爵家は実業家で私も商売をさせてもらっている。父が輸入している食材でスイーツを考案し、職人に作らせていた。そこには友人のフェルナンドの助けもある。


 お茶会で人気が出て、注文を貰い届けていたが、貴族街にショップをオープンさせた。今のところはとても好評で人気店。

 その後は庶民向けにも安価で美味しいお菓子を提供する予定で、フェルナンドが手伝ってくれた。結婚すると今のように頻繁に会う事は出来なくなるだろう。

 でもお互いのプライベートには口を出さない約束となっているから、ジョゼフは私が何をしても誰と会っていても何も思わないだろう。


 私にはタイムリミットがある。一年で一億リルを稼がなくてはいけない。正確に言うとあと五千万リル。私の個人的な蓄えが五千万リルある。

 両親が一億リル持参金として持たせてくれたから、そのお金を両親に返す為だ。お金ではない。お父様は受け取らないと思う。でもこれは私の決心。


 家族に愛されて来たけれど夫には愛されない娘でした。ごめんなさい。


 一年後そう伝えよう……


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