「どうして私の名前を?」

「この前店でスタッフの子がルーナさんの名前を呼んでいたから、ルーナさんと言うのだと、覚えていたんだ。気持ち悪いよな」


 ここは貴族街の店。なぜ彼女がここに居る? そして貴族なら働かなくても良いだろうに、なぜあの店で働いているのか? 謎が多い。

「そうでしたか。お客様は本当に甘いものがお好きなんですね! このお店はチーズケーキがおいしいですよ? 濃厚なチーズと新鮮なたまごでできていてほっぺが落ちそうになります」

 また詳しい説明をしてくれた。

「そうか、それならおすすめを注文しよう」

 チーズケーキと紅茶を注文した。先にルーナの注文したケーキが届けられた。

 ここのスタッフも良く教育されているな。貴族相手だから失礼のないように……って事はルーナはやはり貴族。だからこんなに優雅なんだな。お茶を飲む姿も完璧だ。

「ルーナさんはなぜあそこで働いているのか聞いても良いかな?」

 疑問に思いつい口が動いた。

「働くのが好きなんです。お金に困っていると言うわけではなくて……なんて言うか、お客さまが喜んでくれる顔を直接見たいのです」

 ここは深く聞いてはいけないところだろう。

「そうなのか。君目当てに通っていた男どもが残念がっていたよ」

「制服マジックですよ。だってあの制服はとても可愛いですもの!」

 制服マジックなんてものではない。今日の装いもとても美しいと思った。

「そう言うことにしておくよ。それにしてもこのおすすめのケーキもうまいね」

「本当ですか! 良かったぁ」