「甘いものを食べると疲れが吹っ飛ぶような気がして、疲れている時にはよく食べるんだ。それと彼女もいなければ結婚もしていないよ。自分の為に買っている」

 世の中には甘いものが好きな男の人だっているわよね。甘さ控えめが好みなのかな? この甘みの強いザクザクチョコチップクッキーとかどう思うのかしら?

「うちのお菓子を食べて元気になって貰えたら、とても嬉しい事です」

 それにしてもこの方の装いってうちの国ではあまり見ないような襟元の飾りだわ。細かい刺繍や手が込んでいると分かる宝飾類……

「今日もおすすめを教えてくれる?」

「甘いものがお好きと伺いましたので……このチョコチップクッキーはどうですか? すごく甘いですけど、ザクザクとした食感と小麦の甘さでコーヒーとの相性が良いですよ」

 甘いものにはほろ苦いコーヒーを合わせるとホッとするし、甘いお菓子に甘い飲み物なんて、後からの体重増加が……考えるだけでゾッとするわ。

「今日はそれを貰おうかな」 

「はい。ありがとうございます、お包みいたしますね」

 うちの資材は可愛いからプレゼントにもオススメ。水色の包装紙に白いリボンをかけて渡す。紙袋も水色。


「お待たせ致しました」

「あぁ、ありがとう。この店はみんな元気で明るくていいね」

「わぁ、ありがとうございます! そう言っていただけると皆喜びます」

 嬉しくておもわずガッツポーズを取った。

「ははっ、私も元気がもらえたよ、また来る」

「はい、またお待ちしています」


 颯爽と店を出て行く男の人。何者なんだろう? 貴族だとわざわざこの町で買い物しないだろうし。貴族は貴族の店で買い物をすることに誇りを持っているもの。

 それにこの国の貴族だと大体は顔を合わせたことがあるはず。

「ルーナさんお願いしますっ!」


「はーい。今行きます」




 男は振り返って言った。ルーナと言うのか。可愛い子だった。