別れる必要なんてないっての! それは誰得なのか考えた? 自分に都合が良いだけ。


「侯爵様は仰いました。わたくしに愛を求めてはいけないと。わたくし達は貴族によくある政略結婚です。ですから契約と言う名の書類が存在するのです」


「これからの人生はルーナと共に……生涯をかけて幸せにすると誓う。バカな事をしたと、申し訳なかった」


 頭を下げるジョゼフ。でも最近よく見るのよね、この姿……反省しているのか?

 ジョゼフといて幸せになる未来なんて無い。


「侯爵様、わたくしは誰かを不幸にしてまで侯爵様と一緒にいたいとは思えません。至らない妻で申し訳ございません」

 妻……言いたくないけど実際は妻なのだ。


「ルーナ、よく考えてほしい。まだ私たちはお互いのことを知らないだろう、だから」

「知り合う時間はたっぷりとあったはずです。子供心にあなたにはたくさん傷つけられて来ましたが敢えてここで言うことではありませんので控えておきます」

 ナプキンで口を拭き席を立った。


「ご馳走様でした。もう結構ですわ」


「ルーナ!」


 ジョゼフが私に近寄ってくる声が聞こえましたが、執事長が止めたようです。さぁて戻りますか。そう思った時でした。


「ジェフ! どうして晩餐に私を誘ってくれないの? 自称妻であるそこのルーナさんの指示?」 


「自称ではない! 自称してくれたらどんなにいいか……」


 うん。そこには同意ね。自称していないもの。喧嘩は私のいないところでしてほしい。


「わたくしはそろそろ失礼致しますわね。あとはお任せしました」


 逃げるが勝ち! なんか雰囲気悪いもの!


「「「奥様!」」」


 使用人達に呼ばれるがにこりと笑って歩き出した。笑顔は武器だとよく言ったものね!


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「お嬢様」

「なぁに?」