「申し訳ございませんが昼は先約がございます」

「それなら晩餐だ! 迎えに行くから空けておいてくれ。使用人もルーナを見ていないと言っているんだ」

「……分かりました。そのように」

 面倒くさい。早くジョゼフの仕事が始まれば良いのに! なんで十日も休みなのっ!


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「ルーナ、請求書を持ってきた」

 現れたのはフェルナンドと侍従たち。

「わざわざ届けてくれてありがとう。良かったらお茶にしない?」

 庭に面した応接室に案内した。


「ルーナはここに住んでいて不満はないの?」

 フェルナンドが周りを見て顔を顰める。


「本邸には侯爵様と彼女が住んでいるから邪魔者は退散しなきゃ。本邸に私が居ると使用人達にも申し訳ないわよ。たった一年の付き合いになるんだもの」

 使用人とも深い付き合いはしない。みんないい人達だもの。仲良くなると別れが辛くなる。だから離れに住んでいる方がお互いのためだと思う。

「そうか……何かあったら助けになりたい。すぐに相談してほしい。僕に言えないのならシルビアを通して言ってほしい」

「ありがとう。その時はお願いします。シルビア様にもご心配をお掛けしますわ。そんなことより、私のことはどうでも良いけれど、この請求書の金額! 本当にこの金額でいいの? 安すぎない?」

 貴族街に出したお店の半分以下! 


「いや、合っているよ。かと言って手抜きをしたわけではない。貴族街の店と違って材質も違うしラグジュアリー感と言う店ではないけど、十分な金額だよ」

「申し訳ないわね……」