「え? ルーナに婚約者がいるの?」
ルーナは十五歳になっていた。
「うん。言わなかったかしら? パドルさんに聞いてない?」
パドルさんって名前は商人の時に使っている名前なんですって。本来はデュポン伯爵って呼ばなければいけないみたいだけど、パドルさんって呼ばれる方が良いみたいでそのまま呼んでいる。因みにパドルさんはこの国の子爵位を持っていてフェルナンドが継ぐ予定だって聞いた。
「……知らなかった。だって婚約者を見た事ないし、ルーナくらい可愛かったら放っておかないだろう?」
「相手は大人だもん。八歳歳上で最後に会ったのは三年前だったの。誕生日にカードが届くくらいしか交流がないもん」
「伯爵は知っているの? ルーナはそれで良いの?」
「貴族の結婚は家同士の話だから。結婚したら仲良く出来るのかな……分かんないけどお父様やお母様の様に仲良い夫婦には憧れる」
沈んだ顔を見せるルーナ。
ルーナはフェルナンドが言った通り可愛い容姿の令嬢。ピンクの大きな瞳にプラチナブロンドのフワッとした柔らかい髪の毛が印象的だ。
「ごめん、変な事を聞いてしまって」
「良いの。別に隠していた訳ではないから気にしないで。それよりもまた外国のお話聞かせて! シルビア様とは相変わらず仲がいいの? また遊びに来てほしいって伝えてね」
フェルナンドは十七歳。国で既に成人を迎えていて数々の国を渡り、面白かった事や危なかった事、その国にしかいない動物や食べ物の話を面白おかしく話して聞かせた。シルビアとはフェルナンドの婚約者で、この国の子爵家の令嬢だ。
「良いなぁ~。お父様やお母様も外国に買い付けに行ったりするけれど、私も行ってみたい! お兄様ばっかりズルいわ」