「それは手を打ったのですが、悪い方向へ行ってしまって後悔しています」

 今度は何を言うんだ……何を言われても驚かないぞ!


「彼女は、侯爵家に呼び寄せています」



「……は?」




 驚かないと決めていた……のに!


「ルーナが侯爵夫人の部屋を出て離れに……彼女が本邸で暮らす事になってしまって。もうどうすれば良いのか」

 ジョゼフは頭を抱え出すが、頭を抱えたいのはこっちだ! バカ!


「せめて逆だろ! オンナを離れに住まわせるのなら……百歩譲る! ルーナが離れだと? おまえバカにしているのか!」

 ダメだ……耐えられなかった。



「……元々は彼女が離れに暮らせるように準備していたんです。彼女が本邸がいいと言うとルーナは嬉々として離れに移ってしまって」

「それが事実であるのなら、一年なんて待てるか! 離縁の手続きをする! ルーナを呼べ!」

「待ってください! 一年だけお願いします。ルーナの心を取り戻すように努力します」

 土下座してくる侯爵、足に縋るな! 気持ち悪ぃわ。おかげで落ち着いた。
 ……でも面白いな。ルーナがどう出るか。


「まぁ。そうだな……うん。夫婦の問題です。つい妹可愛さにかっとなってしまった。申し訳ない」


「いや、情けない話を聞かせてしまって、申し訳ない。ルーナとの関係を改めて築いていきたいと思います」


 無理だろうな、この男では。そう思うも地獄に落としてやる姿を見るのは面白そうだ!


「まぁ努力をすると言うのなら侯爵殿は侯爵殿らしく頑張ると良いのでは? 私はどちらの味方も致しません」

 
 表向きにはな。