パンっと手を叩いて、笑顔で応じる。


「……ルーナ!」



「お二人の邪魔は一切いたしません。それでは失礼しますわ。離れを見てきますわね」


 うん。これでいい! 離れで暮らす事によりジョゼフの顔もアグネスの顔も見ないで済む! 契約までの一年間離れでしっかり稼ごう! 明日から私の事業を手伝ってくれる使用人も来る。





「へー。結構広いのねぇ。使用人部屋もあるし、キッチンも広ーい。うん、良いわね。ところで……この趣味の悪い家具を早くあちらに持って行く様に頼んでくれる?」

「はい、()()()

 お嬢様と私を呼ぶ侍女は私が実家から連れてきた。と言うかついて来た。スージーという二十歳の侍女だ。私が十歳の時から付いてくれていて頼りになるお姉さんと言う感じ。

 私がジョゼフからの手紙で胸を痛めている時にスージーは何も言わず寄り添ってくれた。一人で泣いていたはずなのにスージーには分かったみたい。

 よく慰めて貰ったし、唯一離縁する事も知っている信頼のおける侍女だ。


 それからあっという間に引っ越しは完了。侯爵様が訪ねて来たと言うので、応接室に通した。


「すまないルーナ! なんとかして本邸に戻れる様にするから、」

「何を言ってますの? 侯爵様からアグネス様を邸に招くと聞いていましたので謝る必要はございませんわ。わたくしの事はお気になさらずに」

「そんな事が出来るほど私は冷血ではない!」

 この人何を言っているのかしら?

「それでは冷血になってくださいな。契約内容は遂行しましょう。お互いそう言う約束ですから。お話は以上ですか?」