「ベルモンド伯爵、お久しぶりです。ルーナ嬢を久しぶりに見ましたが、また可愛らしくなっていますね」


 そう心にもない挨拶をして、私と二人になると悪態をついた。


「なんで私の婚約者がこんなガキなんだ……友人達にはロリコンなんて言われている。婚約者同伴のパーティーへも行けやしない。私は忙しいからしばらく会えない。誕生日だったな、ほらやるよ」

 ぽいっと放り投げられる星のブローチ。それを受け取ることができなくて床に落ちてしまった。

「あっ……」


「ったく、トロイ奴だな。いらないなら捨てとけ。どうせ安物だ」

 そう言って出て行ってしまった。ジョゼフの家は格上の侯爵家、うちは伯爵家でよくある政略結婚だった。

 チビとか、トロイとか……だって仕方がないもん。頑張って大人になろうと思っても私が一歳歳をとるとジョゼフも一歳歳をとる……だから年齢差は埋まらない。仮令大人のふりをしても十歳は子供だ。分かっているのに悲しくなった。こんなプレゼントなんていらない……欲しくない。




 パパとママは実業家で、ジョゼフの侯爵家とはビジネスで繋がっている。

 ママは国内で有名な服飾店を経営している。どれだけ有名かと言うと予約が取れない程の人気店と言えば分かってもらえるのかなぁ。

 パパは国外から食材を始めママの店でも使われている生地を取り扱っている。その為国外にも顔が広くて、うちには外国のお客様も多い。

 外国のお客様はいつも変わった物を私にお土産にくれるから自ずと目が肥えてしまった。

 お兄様はそんな両親を見て国内外問わず出掛けている。一度行くとしばらく会うこともない。そんな家なの。



「ねぇ、パパ! これパドルさんからお土産にいただいたのだけど、珍しいからこれを仕入れてみたら面白くない?」

 パドルさんの国にしかいない不思議な動物のブローチだった。