「奥様、お、く、さ、ま」
メイド長に呼ばれても返事はしない。
「わたくしその様に呼ばれたくありませんの。わたくしには両親につけてもらったルーナという名前がございます。先程も申した通りそう呼んで貰いたいの。どうしてもダメかしら?」
お願い。と首を傾げて言われると流石のメイド長も嫌とは言えない様で
「こ、こほん。ルーナ様。大変言いにくいのですが、旦那様のお客様が参られた様で、その、どうされますか? 追い出す事も可能ですが……」
お客様? あぁ! あの方が来たのね。結婚式の次の日に早速呼ぶなんて愛されているのね。
「まぁ、追い出すなんて! ご挨拶に行きますわ」
「おくさ、っとルーナ様自らご挨拶へですか!」
驚くメイド長にハッキリと伝える。
「えぇ、侯爵様の大事な方ですもの。ご挨拶を差し上げないと失礼にあたるでしょう? これからこの邸に住むのだから」
ジョゼフの昔からの恋人と聞いた。どんな方なのか見てみたい。っていう好奇心の方が勝っちゃったわ。
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応接室へと行くとそこにはジョゼフと恋人がいた。何やら言い争っているみたい。
執事長や周りにメイド達もいるのに何をそんなに揉めているのだか……あ、夫婦喧嘩は犬も食わないとかって諺があるから仲裁は無意味ね。ずっと夫婦の様な関係だった。と言う事。
「……あ、ルーナ」
こちらに気がつき声をかけるジョゼフ。