「ルーナ嬢」
ルーナの耳元でこそっと囁く男。
「きゃっ!」
耳を押さえて振り向く。油断していたわっ!
「殿下!」
ルーナの同級生の第三王子。
「何してるんだ? こんなところで」
街歩きをしていて、休憩のために公園に来て、公園内の花を見ていた。花に夢中で後ろに全く気が付かなかった。侍女のスージーは頭を下げていた。
さっと手を上げる殿下、恐る恐る頭を上げ一歩後ろへと下がるスージー。
「街歩きです……殿下こそどうされたのですか?」
まだ驚いて心臓がドキドキとしている。
「城にいたら、母が見合いをしろとうるさくて……気分転換をしに街に来た」
ラフな格好をしているがさすが王族と言ったロイヤルスマイルを見せた。スタイルがいいからラフな格好もよく似合う。学園を卒業したのだから殿下もそろそろ婚約……結婚を考えないといけないものね。
「殿下はモテますからねぇ。殿下に見初められた女性は皆さんから注目を浴びることでしょうね。早くお選びにならないと、他の方との縁談が決まってしまうかもしれませんよ?」
学園でいつも女の子たちに囲まれていたもの。選び放題よね。
「はぁ。そのまさかだよ。他の男に取られて困っているんだ。残酷な出来事で未だに心の傷が癒えない。慰めてくれないか?」
少し悲しそうな顔をする殿下だった。
「まぁ……それはなんと言っていいか。まさか本命の令嬢がいらしただなんて」
「もっと早くに行動していれば良かったと後悔してもしきれない。もうすぐ彼女は結婚してしまうからね」
じっとルーナを見つめてくる。
「そうでしたの……殿下にもそう言った相手の方がおられたとは。相手の方は殿下の気持ちをご存知なのですか?」