有無も言わさず、にこりと笑顔を貼り付け席を立ち出て行ってしまった……



「旦那様、失礼ですが契約とはなんの話でしょうか? 私は執事として聞く権利があります」

 


 結婚前に出した手紙の事を口にした。それは約束というか契約となって法律の元でも有効なのだそうだ。



「バカな事を! なんて事を……」


「今更ながら後悔をしている。そして今日アグネスが引っ越してくるんだ……」

「なっ、まさかあの離れの家具を新調されていたのは……奥様のための準備ではないと? あそこは、あの離れは歴代の奥様の癒しの場になる為に作られた建物ですぞ!」

 執事が怒り更に呆れているようだ。


「困った……困ったぞ! どうする。まさかルーナがあんなに美しく成長しているとは思わなかった。最後に見た時はまだ子供で……」

「バカですか! 女性の成長は早いのです! しかも奥様も同意をしているとか……まさかあの結婚式の誓いの口付けは……」


「言うな! 拒否されたんだ……恐らく」

 何も言わない(言えない)執事と呆れ返ったメイド長とがっくり肩を落とすジョゼフだった。バカだった。私はバカだ!