「行ってきます。なるべく早く帰ってくるから、夕食は一緒に摂りましょう」
エミリオは今から商談へとでかける。私はと言うと学園を卒業して今は公爵夫人に仕事を教えてもらっていて、結婚式は来月に迫っている。
「行ってらっしゃいませ。おかえりをお待ちしていますね」
そう言い見送るとエミリオは嬉しそうに私の頬にキスをして出ていった。
エミリオはとても優しいし、愛情をたっぷり注いでくれるので、安心して見送る事が出来る。
結婚式に招待したゲストの人数の確認、料理や飾り付けなど、夫人や執事と話をしていると、いつのまにか辺りは暗くなってきた。
「そろそろエミリオ様がおかえりになる頃かしら?」
「そうですね。続きはまた明日にしましょう」
執事が書類を片付け始める。
「ルーナちゃんみたいなしっかりした子がエミリオのお嫁さんになってくれるなんて嬉しいわ。早く孫の顔が見たいわ」
「……孫? ですか。少し早いお話ですね……」
夫人に悪気はないのだろうけど、恥ずかしくて堪らない。
「ふふっ。なんてね。焦らなくてもいいの。こればっかりは分からないものね」
パタパタと顔を手で仰ぐと執事と夫人はにこにこと微笑んでいた。
「エミリオ様がおかえりになりました」
スージーに声をかけられて、すぐにエントランスへと迎えに行った。
「おかえりなさいませ」
「ただいま。ルーの顔を見ると疲れが吹っ飛ぶようです」
そう言って朝出かけた時と同じように頬にキスをしようと近づいてくるエミリオ……すっと避けるルーナ。
「え……ルー? どうしたの」
冷めた目をするルーナを見て違和感を感じるエミリオ。
「本日はどちらに行かれていたのでしたっけ?」
声のトーンが低い。